真嶋 潤子(まじま じゅんこ)
e-mail: jmajima@lang.osaka-u.ac.jp
HP: http://homepage.mac.com/jmajima1/bukosite/home.html

(1)自己紹介
 日本語教育学の看板を掲げて「良質の日本語教師」の育成を目下の使命と心得てやっています。日本語教師を目指していない人には「日本語教育に理解のある一般市民」になってもらいたいです。
 国内で日本語教育に関わる問題には、外国人(日本語非母語話者)児童生徒を始めとして社会のマイノリティー・社会的弱者に関することが多々あります。 “Noblesse oblige”という言葉がありますが、意識しているかどうかに関わらず、みなさんは色々な意味で「社会のエリート」になる人たちですから、「エリートでない人々」のことも考える責任を持ってもらえたら、この社会がだれにとっても住みやすくなるのではないかと思っています。物事を複数の視点から見ることができるように、日本以外の国や地域から発信されたニュース報道やメディアにも、日頃から接することをお薦めします。
 「甘い」だけでない様々な経験を「人生の栄養」にしてください。

(2)推薦図書
《1》朴裕河『和解のために―教科書、慰安婦、靖国、独島―』(平凡社、2006、2310円)
 著者の思索に勇気づけられます。日本語教育に携わる人は特に、日本語学習者の出身国の文化や歴史を尊重し、学び続ける努力が必要だろうと思います。

《2》小熊英二『日本という国』(理論社、2006、1260円)
 《1》を読む前に、近代日本の始まりから今にいたる基礎知識に自信のない人は、これがお勧め。すぐ読めてよくわかります。もちろん「全て」がわかるわけではありません。

《3》内澤旬子『世界屠畜紀行』(解放出版社、2007、2310円)
 きれいにパックされた肉を買って食べている私たちは、その動物がどのように屠殺され処理されているかを見ることはもちろん、思いを馳せることも少ないでしょう。著者が、10カ国余を廻って、現地の人たちに驚かれながら現場を取材し、魅力的なイラストで解説してくれるこの本は、動植物の命をいただいて(奪うことで)しか生きられない自分の姿も考えさせてくれます。「屠畜」に関わる人たちをどのように捉えるかも、文化によって異なり興味深いです。動物を殺すところを子どもに見せる文化と、見せない文化の違いは何なのか、考えさせられます。(私のように)屠殺するところを見たことのない人に読んでもらいたい本です。人間は謙虚でありたいし、口にする食材に自覚的でありたいと思います。