清水 康次(しみず やすつぐ)        e-mail: shimizu@let.osaka-u.ac.jp

(1)自己紹介



 生まれは奈良。現在は滋賀県大津市に住んでいます。大学からは遠いのですが、琵琶湖のそばにあって、景色がよく、空気が澄んでいます。出身は京都大学。大阪大学では、文学研究科の文化動態論専攻の文学環境論コースの教授として着任しており、文化表現論専攻の比較文学専門分野と外国語学部日本語専攻の教授とを兼任しています。
(2)考えてきたこと、考えていること
 研究の領域は、日本近代文学と書誌出版文化史です。といっても、後の方は自分で勝手に作った研究領域名です。まず、芥川龍之介の文学から始めて、初期の作品から時代を追って読んで行きました。どんなふうに読んだかというと、作品を少しずつノートに書き写しては自分のコメントを書き加えて、一字一句に注目していきました。いわば読む修行です。それから次第に他の作家にも手を広げ、志賀直哉・夏目漱石・太宰治などの作品を取り上げて論じてきました。また、いつの頃からか、作品を掲載した雑誌や当時の本に惹かれ、古びた雑誌や本を買い集めてきました。今は、より広く出版文化というものに関心が拡大しています。もう1つ、近年は、文学と美術など、文学と外部との関係に目を向けるようになってきました。文学研究科の方では、実篤や志賀の作っていた『白樺』という雑誌を通して、文学と美術の〈コラボレーション〉や〈越境〉について考えています。
 『白樺』もそうですが、「仲間」というものについて、この頃考えています。私たちの世代は、あまり仲間というものを重視してこなかったように思います。ところが、最近になって、仲間というものが注目され、強く求められてきているように思います。漫画でいうなら、「ドラゴンボール」と「ワンピース」の違いです。「白い巨塔」や「ブラックジャック」から「医龍」や「チーム・バチスタ」への変化です。私たちの世代は、個性を守ろうとして孤独になろうとしてきたところがあります。しかし、今は、仲間とともにいることで個性が生かせると考えるようになってきている。個性や主体性ということ、共感や交流ということについての考え方が変化してきているのかもしれません。かつての『白樺』の時代にも、そういうものがあったのではないか……、などと考えています。


(3)推薦図書
《1》三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮社、1890円) 
 駅伝のチームの話。感動します。

《2》嶺隆『帝国劇場開幕』(中公新書、735円)
 明治・大正という時代とその文化について、鮮明なイメージを持たせてくれます。