2024 9/7 第7回台湾引揚研究会
2024年9月7日、広島大学東京オフィス及びオンラインで第7回台湾引揚研究会を実施しました。今回も前回同様2名の報告者の報告と質疑・議論を行いました。
前半の報告者である松田良孝氏(ジャーナリスト)は「八重山と蘇澳/南方澳―石垣市『市民の戦時戦後体験記録』をひもとく」という題で蘇澳/南方澳と八重山間の引揚げに関する研究報告を行いました。松田氏は沖縄戦全体をとらえていく上で八重山の状況や戦時の展開について未だ充分な共通認識が持たれていないことを問題意識として持っておられ、その上で、表題の資料から特に疎開と引揚げの体験記事の検討を行うとともに、引揚関係の諸資料を松田氏が数値的に分析したものも合わせて示し、八重山においては蘇澳/南方澳からの航路が重要性を持っていたことを述べました。
質疑では、沖縄の疎開の体制や実際の状況、八重山への引揚げ時期などについて質問が出されました。また、表題資料の特徴についても議論が交わされました。
後半の所澤潤氏の報告「引揚者を見送った台湾の人たち」では、これまで引揚当事者の日本人に注目する研究が多かった一方で、引揚者を見送った台湾人においても大きな出来事であったことを指摘し、これまで所澤氏が収集したオーラルヒストリーをもとに、引揚げに関する台湾人側の体験について紹介し、その内容を検討しました。紹介された内容は、敗戦から引揚げ当時の様々な状況を詳細に述べたものが多く、引揚げ当時の内地人との交流の多面的な様相を示すものでした。
質疑では、敗戦から引揚時にかけての台湾人側の将来認識、当時の様々な階層の台湾人の日本認識についての質問が出されました。また、紹介された内容について、参加した研究者の注目する視点が反映された質問も出されました。
今回を含む7回にわたる研究会で、次月の国際シンポジウムでの報告者全員が研究報告を行いました。国際シンポジウムに向けて、これまでの研究会の議論を踏まえて効果的に成果発表できる体制をつくり、当日に活発な議論が生まれるよう準備を行っていきたいと考えています。