BLOG(活動報告)

2024 11/12 「ドイツ語と台湾研究」講演会を開催しました

 

 2024年11月12日、国立政治大学の陳致宏助理教授及び姚紹基副教授を講師に迎え、「德語與臺灣研究(ドイツ語と台湾研究)」講演会を行いました。講演の通訳は、本学の中井健太氏が務めました。

 

 

 陳先生の講演「德國史家Ludwig Riess眼中的日本與臺灣(ドイツの歴史家Ludwig Riessの眼に映る日本と台湾)」では、ドイツの歴史家・Ludwig Riessに注目し、当時の手紙や写真等の史料を用いて、彼の眼から見た日本と台湾を紹介しました。
 Riessは1887年に来日し、東京大学にて世界史や史学の方法論の授業を担当した人物で、史学会の設立や同会の成果物刊行を勧め、日本における専門家による歴史学の成立に寄与しました。また、彼が著した『台湾島史』は史学の専門家によって台湾の歴史が記録された重要な書籍として知られています。講演ではこれに関する分析も行いました。

 

 続いて、後半を担当した姚先生は「德籍中國海關職員Georg Kleinwächter在南臺灣的故事(ドイツ籍中国税関職員Georg Kleinwächter が南台湾で経験したこと)」という題で講演しました。姚先生は、ベルリンの民族博物館の台湾原住民関連の収蔵物について説明し、約450件の台湾原住民の文物及び約70枚の写真があること、最も古いものは1871年に収蔵されていたこと、当時中国の税関職員を務めていたGeorg Kleinwächterが多く収集をしていたことなどを紹介しました。その上で、Kleinwächterの台湾南部調査の動向や関連史料についての分析を行いました。さらに、収蔵品について、展示場所が不足していることや博物館の方針等の理由で未だ日の目を見ておらず、将来的にこれらの歴史的文物が活用されることへの希望を語りました。また、文物の来歴や返還等の今後の課題についても言及しました。

 

 講演後、ドイツ人がどのような経緯で台湾に入ったのかということについての説明や討論があり、また世界史の中での台湾の状況について具体的に語られる一幕もありました。両先生の講演を通して、学生たちは毎週のゼミでの学びとは異なる側面から台湾を理解し、台湾研究の多元性について知ることができたと思います。

2024年12月11日

2024 10/11 一橋大学吉田真悟ゼミと共催で冨田哲氏講演会を開催しました

 2024年10月11日、一橋大学国立東キャンパス国際研究館大教室にて、大阪大学台湾研究講座主催(一橋大学吉田真悟ゼミ共催)、冨田哲先生講演「「中文」「国語」「華語」「台湾華語」―台湾でMandarinをどう称するか」を開催しました。

 

 冨田先生は台湾の社会言語学および台湾史の専門家であり、今回は台湾における「中文」「国語」「華語」「台湾華語」という呼称がどのように使われ、その社会的意味がどのように変化してきたかをテーマとしてご講演いただきました。

 まず、冨田先生は、台湾で使用される「中文」「国語」「華語」の各名称が、いずれもMandarinを指しつつも異なる意味合いを持つことを指摘しました。その上で「台湾華語」の形成過程とその意味について説明しました。
 さらに、Mandarinは今後「われわれ(台湾人)の言語」として受け入れられつつ、それを「国語」、「中文」から「(台湾)華語」へ読み替える動きが顕在化するのではないかと語りました。そうして華語世界における台湾の独自性を強調する動きが増えると予想する一方で、強圧的な言語政策の下で形成された「台湾華語」に固有性や在地性を認めることの是非についても言及しました。

2024年11月27日

2024 10/29-30 国立台湾師範大学物理学系学生との交流を行いました

 2024年10月29日-30日、国立台湾師範大学理学院物理学系の劉祥麟教授が学生を連れて大阪大学を訪問しました。10月29日に本学箕面キャンパス、30日に本学豊中キャンパスにて本学中国語専攻の学生と交流会を行いました。
10月29日はまず3限の中国語専攻2回生の授業で交流を行いました。本学の学生は「私の一週間」及び「私の人生設計」という題で、師範大学の学生は「台湾社会から見た日本社会」、「台湾人から見た日本社会の長所・短所」という題で発表を行いました。台湾師範大学の学生からは日本の大学生の多くがアルバイトをしていること、そして将来的にマイホームの購入や子供を持つことを考えていることに驚きの声が上がりました。本学の女子学生の一人は、日本では未だに女性にとって結婚と子育てが最大の幸せだと言われることが多く、それに疑問をいただいていると述べました。その後グループに分かれて意見交換を行いました。 続く4限の上級生対象の授業では本学の学生より「大阪の観光名所」についての発表がありました。道頓堀など、有名な観光名所がスクリーンに映し出されると台湾師範大学の学生から歓声が上がりました。発表が終わった後、数人ずつのグループに分かれてキャンパスツアーを行いました。学生たちは和やかな雰囲気で交流を楽しみました。

 開会の挨拶

 師範大学学生の発表

 意見交換の様子

 4限の集合写真

 10月30日は本学豊中キャンパスにて、林初梅教授が担当する中国語専攻1年生の授業に参加し、交流を行いました。まず、劉教授と台湾師範大学の学生たちが自己紹介を行い、その後本学学生2名と台湾師範大学学生1名でグループを作り、豊中キャンパス構内を1時間程度散策しながら交流を行いました。中国語専攻の学生たちは、事前に散策の計画を立てたり、会話の内容を考えたりと、入念な準備の上、当日を迎えました。当日は天候に恵まれ、良い雰囲気の中で、お互いの大学生活や趣味についての会話を楽しみながら、豊中キャンパスの各施設を散策しました。

 

 師範大学学生による自己紹介



 豊中キャンパス散策

 30日の集合写真

2024年10月30日

2024 10/22 国立台湾大学史甄陶先生の講演会を開催しました

 2024年10月22日に本講座主催で、国立台湾大学中国文学系副教授史甄陶先生講演会 「〈讀中文系的人〉的當代省思 ―「讀中文系的人」を今、振り返る」を開催しました。

 

 本講演では、史先生が林文月氏の1977年の作品である〈讀中文系的人〉を取り上げ、台湾の最高学府である国立台湾大学の中国文学科のこれまでの発展と現況について述べ、時代背景を踏まえ、中文系の意義について私たちに問いかけました。

 

 史先生は1970年代~80年代の台湾大学中文系の教育課程を示した上で同課程の近年の変化について述べました。
特に、2010年以降においてLiteracy-言語表現と分析能力、Literature-古典解釈能力、Literate-人文素養を重点として、学生の能力を高めることを教育目標として掲げ、「国学の伝承」がもはや第一の重点ではないことを述べました。

 また、応用型のカリキュラム増設について、また、今年度新設した「生成式AI的人文導論」と「AI與數位人文研究專題」といった授業について紹介しました。

 最後に史先生は、台湾大学中文系が「国学」の枠組みを超え、その重点において理論に加え応用分野、古典文学に加え現代文学、国家・民族への視点を超え個人への視点を持つなど、時代を経て変化し、視野を拡大してきたと分析しました。さらに、中国文学について、作者としての「人」を出発点とし、読者としての「人」の存在について問う学問であること、さらに言えば、人が生きることについてその意義と価値を見出すことが学問として重要であると述べました。また、〈讀中文系的人〉の現代におけるタスクとして最も重要なことは自我の理解にあるとし、ドイツの学者Bultmannの文章を引用しながら、テキスト・文章との関わりを通して理解し、絶えず自己を修正することにより、新たな自我の理解に繋げることにあると述べました。

 

 講演後はゼミ生から終了時間まで質問も出され、学生にとって学びの多い講演会となりました。

 

2024年10月23日

2024 10/6 国際シンポジウム「日台のはざまの引揚者たち」を開催しました

 2024年10月6日(日)に台湾研究講座主催の国際シンポジウム「日台のはざまの引揚者たち」を大阪大学中之島センター7階セミナー室7C+7Dにて開催しました。本シンポジウムは、本講座の大阪大学林初梅教授が主催する台湾引揚研究会で2022年9月から2年にわたり実施してきた個別の研究会で得られた学術的成果を報告し、広く日台の研究者や台湾引揚関係者とともに議論することを主旨として開催したものです。当日は報告担当者、主催側関係者のほか、日本、台湾の研究者や実際に引揚の経験をお持ちの湾生の方をふくめ、約70名が参加しました。

 

 林初梅教授による開会の挨拶

 第1セッションは、「台湾と沖縄からみた引揚者」をテーマに林初梅氏、野入直美氏、松田良孝氏が台湾からの引き揚げに関して、沖縄の存在に注目した(林氏の総論では台湾からの引揚者の中で沖縄への引揚者の存在も含めた)報告を行いました。林氏は「日本引揚の前夜―1945年~1947年台湾引揚者の処遇」と題して、日台双方の資料を用いて引揚前から3期に渡る引揚げの展開や⽇僑と琉僑という区分について取り上げ、また個別の事例についても言及しました。野入氏は「女性引揚者を可視化する―沖縄の台湾引揚者を中心に」という題で、台湾から沖縄への女性引揚者について、見えにくい階層性やモノグラフにおける偏りの問題を指摘し、試論として満洲との比較から階層的分析を行いました。松田氏は「八重山と蘇澳/南方澳―石垣市『市民の戦時戦後体験記録』という題で、表題資料や他の資料から、戦前戦後を通じて八重山から台湾北部にかけて経済的な準一体性が維持された「境域」が存在したことを提起し、引揚に関しては沖縄本島の様相と異なり引揚の出発港としての役割が蘇澳に強く期待されていた面があったことを述べました。

  第1セッションにて

 第2セッションは「変動期のなかの引揚者」として所澤潤氏、黄英哲氏、顔杏如氏による報告が行われ、同セッションは、各氏の扱う資料に特徴がみられました。所澤氏は「引揚者を見送った人たち」という題で、引揚は見送った台湾人にとっても大きな出来事であったという視点から、氏がこれまで収集したオーラルヒストリーをもとに報告を行いました。多様な語りから、複雑さがありながら台湾人にとって日本人の引揚げが様々な角度から重要性をもっていたことを述べました。黄英哲氏は「台湾における日本人引揚者雑誌『新声』について」という題で、引揚者向け雑誌『新声』の創刊背景を述べたうえで、魯迅の抄訳版「藤野先生」が掲載された背景、削除された部分、雑誌編集者・読者の立場の相違の観点から考察を行いました。顔氏は「『全国引揚者新聞』に見る台湾引揚者の戦後初期」と題し、表題資料について、国民の差別感情を取り除くことや、戦後の生活の立て直し、戦前の「開拓精神」を強調する言説とともに、「南方感覚」として台湾への「ノスタルジア」の存在を見出し、戦前と戦後の連続性と断絶性について総合的に考察しました。

 第2セッションにて

 第3セッション「湾生がかたる引揚体験」は、3名の湾生による台湾での生活や引揚についての語りに重点が置かれ、セッション司会の所澤潤氏のファシリテートのもと、登壇の三氏が植民地台湾での体験、引揚げ当時の詳細についてなどを語りました。フロアの参加者にも湾生の方がおられ、その方たちの体験もお聞きすることができ、貴重な語りから台湾での体験や引揚げについて様々な側面を理解することができました。

 第4セッション「引揚者の戦後日本」は黄紹恒氏、菅野敦志氏、石井清輝氏が担当し、引揚者の植民地経験・引揚及びその後について、各氏の視点から分析を行いました。黄紹恒氏は「台北帝大教授・楠井隆三の引揚と戦後」という題で、表題の台北帝大教授の楠井について戦後の台北帝大接収後から関西学院へ移る過程について、戦前以来の人的つながりなどに注目して分析を行いました。菅野氏は「湾生・女性・スポーツ―1954年マニラ・アジア大会と溝口百合子を中心に―」と題し、表題の人物の動向から、戦前戦後の湾生としての体験や、戦時中の行為により対日感情が激しかったフィリピンでのアジア大会での一連の展開が、アジアの中の日本にとって、思い起こされるべき戦前と戦後をつなぐ視座を持っていることを述べました。石井氏は「植民地と引揚(後)を想起する―花蓮港中学校同窓生を事例として」と題して、日本人同窓生の「記憶」と語り、そして、それがどのような意味を持ってきたかという問題について、ノスタルジア、引揚者としての苦労などといった物語を緩やかに共有する一方、「被支配者」への視点や彼らへの配慮も示し、それらが台湾人同窓生の経験と記憶が有する両義性、多面性への共感と尊重、理解によって生み出されていたと分析しました。

 上記の各セッションにおいて、質疑・コメントの時間が設けられ、引揚を専門とする研究者や日台の台湾史の研究者による質問やコメント、報告者によって提起された概念に対する議論、湾生の方による語りの共有など、多様な背景をもつフロア参加者によるリプライによって双方向性を持った充実したシンポジウムとなりました。本シンポジウムでのリプライも踏まえ、書籍などの成果報告に繋げられればと考えています。充実した内容のシンポジウムとなりましたことにつき、ご参加いただいた皆様や関係者の皆さまに心よりお礼申し上げます。

 質疑応答の場面(第4セッション)


 

2024年10月16日

2024 9/7 第7回台湾引揚研究会

 2024年9月7日、広島大学東京オフィス及びオンラインで第7回台湾引揚研究会を実施しました。今回も前回同様2名の報告者の報告と質疑・議論を行いました。

 前半の報告者である松田良孝氏(ジャーナリスト)は「八重山と蘇澳/南方澳―石垣市『市民の戦時戦後体験記録』をひもとく」という題で蘇澳/南方澳と八重山間の引揚げに関する研究報告を行いました。松田氏は沖縄戦全体をとらえていく上で八重山の状況や戦時の展開について未だ充分な共通認識が持たれていないことを問題意識として持っておられ、その上で、表題の資料から特に疎開と引揚げの体験記事の検討を行うとともに、引揚関係の諸資料を松田氏が数値的に分析したものも合わせて示し、八重山においては蘇澳/南方澳からの航路が重要性を持っていたことを述べました。
 質疑では、沖縄の疎開の体制や実際の状況、八重山への引揚げ時期などについて質問が出されました。また、表題資料の特徴についても議論が交わされました。


 後半の所澤潤氏の報告「引揚者を見送った台湾の人たち」では、これまで引揚当事者の日本人に注目する研究が多かった一方で、引揚者を見送った台湾人においても大きな出来事であったことを指摘し、これまで所澤氏が収集したオーラルヒストリーをもとに、引揚げに関する台湾人側の体験について紹介し、その内容を検討しました。紹介された内容は、敗戦から引揚げ当時の様々な状況を詳細に述べたものが多く、引揚げ当時の内地人との交流の多面的な様相を示すものでした。
 質疑では、敗戦から引揚時にかけての台湾人側の将来認識、当時の様々な階層の台湾人の日本認識についての質問が出されました。また、紹介された内容について、参加した研究者の注目する視点が反映された質問も出されました。

 今回を含む7回にわたる研究会で、次月の国際シンポジウムでの報告者全員が研究報告を行いました。国際シンポジウムに向けて、これまでの研究会の議論を踏まえて効果的に成果発表できる体制をつくり、当日に活発な議論が生まれるよう準備を行っていきたいと考えています。

 

2024年09月11日

2024 7/27 市民講座「親子で学ぶ台湾」を開催しました

 2024年7月27日(土)午後に箕面市立船場図書館(大阪大学外国学図書館)3階
「るくす」にて、台湾研究講座主催7月市民講座「親子で学ぶ台湾」を開催しました。


 本市民講座は、台湾研究講座の研究活動におけるこれまでの学びのエッセンスを社会に向けて発信していくことを目指し企画したものであり、特に、小学生とその保護者を対象に台湾理解を深めていただくこと、また、小学生においては夏休みの自由研究のテーマ探しの一助となることを目的として開催しました。講座にあたっては後者の小学生の自由研究を念頭に、課題探究的な学習を意識したレジュメを配布し、台湾の関連図書も図書館に選定いただき会場に展示しました。

 

 プログラムとしては、 本講座のスタッフより、台湾の基本情報(地理等)、食べ物や関連文化、鉄道や観光地、原住民、野球等の紹介をしました。台湾の紹介に関しては、大陸文化との関わり、日本や諸外国との関わり、自然との関わりなども意識しながら、クイズ形式で進行しました。最後には、中国語や台湾語について、基本的な内容を学習しました。その際、中国語での自己紹介や、講座で紹介した食べ物や観光地の中国語を当てるカルタゲームを行いました。

 プログラム終了後に実施したアンケート(保護者の方・小学生の方それぞれに実施)からは、初めての内容で興味深かった、台湾に興味を持つきっかけになった、台湾のことを課題のテーマに決めた、発音練習ができてよかったなど、好意的な感想をいただきました

  本市民講座によって、参加された方が今後さらに台湾について理解を深める際のきっかけとなり、また、特に小学生の方は今後、学校での探究学習やご自身の今後のテーマとして台湾のことを考えていただくことに繋がれば幸いです。

 また、本市民講座は箕面市のラジオ局「タッキー81.6 みのおエフエム」の記者の方から取材を受け、その模様が8月上旬に計4回放送されました。台湾の魅力を、参加者だけでなく、より多くの市民の方に届けることができました。

 

 

 

2024年07月27日

2024 6/29 中村地平ドキュメンタリー映画上映会

 2024年6月29日、大阪大学箕面キャンパスの大阪外国語大学記念ホールで、
中村地平ドキュメンタリー映画上映会を開催しました。
 本映画は宮崎市制100周年及び宮崎県置県140周年を記念したもので、宮崎県を中心に全国で上映会が催されており、今回(6月29日)の上映会は大阪大学台湾研究講座が共催(主催:日州ドキュメンタリー)となった上映会です。

 

 会場の様子

 中村地平は台湾に縁のある日本人作家で、1908年、宮崎県に生まれ、中学卒業後台北高等学校(現:国立台湾師範大学)に進学しました。その後南方文学を提唱する著名な作家へ成長しましたが、戦時期に入り徴用されました。1944年には宮崎県に帰郷し、戦後は宮崎県の文化の復興、教育、地方創生に尽力しました。

 本学の深尾教授と林教授

 今回上映されたドキュメンタリー映画は、彼の戦時期や戦後について資料や関係者の証言をもとに追いかけたものです。上映会当日は小松孝英監督も会場に足を運び、撮影の裏話などを語りました。質疑応答では、宮崎出身者に関わる質問などもあり、活発な議論が行われました。

2024年07月03日

2024 6/25 「湾生を囲む会」座談会を開催しました

 2024年6月25日、箕面市立船場図書館AVコモンズにて、戦後に台湾から引き揚げた湾生(植民地台湾生まれの日本人)の方三名をゲストとしてお招きし、
「湾生を囲む会」座談会を開催しました。

 

 当座談会は林初梅教授の授業の一環として開催したもので、受講生による司会・運営のもと、お三方からご自身やご家族の来歴、台湾での生活体験、また、当時の台湾について歴史教育での扱われ方も含めお話しいただきました。

 お三方からは、それぞれ出身地における自然との関わり、学校生活、原住民との交流について、戦争体験、ゲストの方のご家族と霧社事件の関わりなど、様々な内容を具体的にお話しいただきました。

 

 次に、参加者からの質疑やコメントの時間を設けました。学生からは当時の生の声を聞く機会が少ない若者の立場から歴史的事実を発信していく際の考え方についての問題提起や、当時の日本人と台湾人の実際の学校現場での教員からの扱いの違いや差別について質問がありました。ゲストの皆さまからは、これらに関しても丁寧にお答えをいただきました。

 

 座談会を通して、当時を知る湾生の方々から様々なお話しを聞く貴重な機会を得ることができました。授業の受講生は台湾の歴史教育の動向を検討するなかで台湾史についても学んできましたが、湾生の方の実際の体験談や具体的なお話を聞き、日本と台湾の歴史についてさらに理解を深めることができたことと思います。

2024年06月26日

2024 6/18 マレーシアの華語教育 講演会を開催しました

  2024年6月18日16:50-18:20(林初梅教授ゼミ)に、台湾研究講座主催講演会「馬來西亞的華語教育(マレーシアの華語教育)」を開催しました。

 マレーシアの研究機関に所属しておられる詹緣端氏(マレーシア華社研究センター主任兼研究員)、廖冰凌氏(トゥンクアブドゥルラーマン大学副教授兼系主任)のお二人からマレーシアの華語教育をテーマにご講演いただきました。

 

 第一部では詹緣端氏から「華文教育的體系與課題研究舉例(華文教育の体系とその研究事例)」という題で、マレーシアの言語政策や教育制度、特に華文教育を取り巻く環境やその変遷についてお話しいただきました。華人以外の民族が中華系の学校に入る例が増えている、という件については会場から驚きの声が上がりました。

 

 第二部では廖冰凌氏より「華語教育與華文教科書編撰現況(華語教育及び華文教科書の編纂の現況)」という題で、マレーシアでの華文教科書の変遷についてご説明いただきました。マレーシアの華文教科書は、戦前は中国で教えられていた内容をそのまま踏襲していましたが、戦後マレーシアでは「現地化」の推進がされてきたとのことでした。具体的には、戦前は中国で一般的な、竹、雪、梅の花等が教科書に登場していましたが、現在はマレーシアの子どもたちになじみのある植物等に変更されているという例もお教えいただきました。

 

最後の質疑応答では、学生から積極的に手が挙がりました。これまで、台湾華語について様々な視点から研究・教育の発展に取り組んできた台湾研究講座としては、他地域、華語語圏における華語教育の状況について理解を深めることができ、充実した講演会となりました。

2024年06月19日

2024 6/9 第6回台湾引揚研究会

 2024年6月9日、広島大学東京オフィス及びオンラインで第6回台湾引揚研究会を実施しました。今回は林初梅氏(大阪大学教授)、黄英哲氏(愛知大学教授)による研究報告と報告に関する質疑応答・議論を行いました。


 前半は、林初梅教授が「日本引揚の前夜:1945~1947年台湾引揚者の処遇」と題した報告を行いました。林教授は、台湾からの引揚に関する一次資料を用い、台湾からの引揚げの概要を確認し、林氏が特に注目する留用日本人子弟の学校の状況について自身のこれまでの調査内容を報告しました。

 後半は、黄英哲教授が「台湾引揚者の雑誌『新声』をめぐる」という題で報告しました。黄教授は雑誌『新声』に注目し、特に、同誌に掲載された「藤野先生」とそれに対して後日出された読者の疑問について具体的に検討しました。
 

 今回の二報告においても、参加者による活発な議論が行われ、台湾引揚研究会の国際シンポジウム開催やその成果の出版に向け、充実した内容となりました。

 

 


2024年06月12日

2024 5/31林宜平氏(八百金股份公司営運長、共同創辦人)講演会を開催しました

 2024年5月31日、大阪大学箕面キャンパスにて本学深尾葉子教授主催のもと、八百金股份公司の営運長及び共同創辦人である林宜平氏を講師として招き、 「100公頃 流域收復上游計劃」と題した講演会を行いました。

 林氏は、八百金股份公司では台湾の生態系(特に「石虎(タイワンヤマネコ)」、「臺灣藍鵲(ヤマムスメ)」、)「山麻雀(ニュウナイスズメ)」)を守るため、米、茶、粟農家と無農薬栽培の契約を結び、これらの農作物を販売しており、そしてこのような活動を通してSDGsや地域創生にも貢献していると語りました。また、「臺灣藍鵲茶」の運営の背景や文化的意義についても説明がありました。

 最後に、同氏から「臺灣藍鵲茶」が振舞われ、学生たちは実際にその味や香りを楽しむことができました。

2024年06月12日

2024 5/17 林伯杰氏による「民歌」講演会を開催しました


 2024年5月17日の13時30分~15時まで、大阪大学箕面キャンパス記念ホールにて、台湾で著名な音楽プロデューサー・林伯杰氏による講演会(担当:郭修静特任教員)を開催しました。2019年以降、林伯杰氏には講演会で度々お世話になっており、今回は「民歌49 永恆的未央歌 台湾フォークソングよ、永遠に」という題でご講演いただきました。

 

 本講演会では台湾の学園フォークソングの50年の歴史、時代背景、裏話等が紹介されました。台湾では1965年にテレビ局が設置された頃は日本の歌謡曲に影響を受けた曲が人気でした。しかし1970年代に入ると、中華民国の国連脱退や日本との国交の断絶を受け、曲風も変わり始めました。当時の若者はアメリカの曲を好みましたが、1975年に台湾大学の学生・楊弦が台北中山堂でのコンサートを開き、1976年の淡江大学のフィリピン出身の華僑・李雙澤が台湾語の曲「補破網」を歌うなど、「自分たち」の曲を歌う者が現れ、それが台湾社会全体に認知されるようになりました。

 そのような中、1977年に学園フォークソングを表彰する、金韻獎が創設されました。学園フォークソングの歌手は、フレッシュな雰囲気と親近感があることが大きな特徴でした。その後金韻獎からは、「美麗島」、「橄欖樹」等のヒット曲が生まれましたが、戒厳令の影響を受けて、CD発売の見送りや歌詞の変更を余儀なくされることもありました。

 

 上記のように、台湾の楽曲は、初期には日本の影響を受け、次にアメリカの影響を受けた後、1980年代に台湾独自の路線を進みました。学園フォークソングはその先駆けとなるような存在であり、1980年代は台湾の流行音楽界のキーポイントになりました。

 林先生は、音楽は外国語の勉強に最適なので、学園フォークソングをぜひ活用するようアドバイスをして、本講演会を締めくくりました。


2024年05月22日

2024 2/23 第5回台湾引揚研究会

 2024年2月23日、広島大学東京オフィスにて第5回台湾引揚研究会を行いました。今回は、陽明交通大学黄紹恒教授、台湾大学顔杏如副教授の2名による研究報告を実施しました。


 最初に報告した黄紹恒教授は、日本統治時代に台北帝国大学教授であった楠井隆三に注目した報告を行いました。黄教授は、楠井の生涯を通じて、外地の帝国大学教員が戦後どのような経緯で教鞭を取り直すこととなったのか、また、戦争世代である楠井の内面的な心情はどのようであったのか、という点を問とし、自身の分析を述べました。
 報告終了後の全体議論では、事実確認や楠井の内面に関する分析のほか、植民地台湾にいた他の日本人学者の引揚げや引揚げ資料についての情報共有も行われました。


 黄教授の報告後、小憩ののち、顔杏如副教授の報告が行われました。顔副教授は問題意識として、戦後初期に祖国であり異国でもある日本で生活にいかに立て直したのか、立て直しの過程において戦前の植民地との関係はいかなるものであったのか、という点を挙げ、『全国引揚者新聞』の分析を行いました。
 全体議論では、時代ごとの引揚者の語りの状況についての議論や、女性に関する記事が時期ごとにどの程度あるのか調査が必要だという提起がありました。


 二報告及びその後の議論によって、引揚者の研究において研究者が意識的に取り組む必要がある点が確認され、今後の全体の成果発表に向けて良い報告となりました。

 

第5回台湾引揚研究会

日時:2024年2月23日 10:00~12:30
場所:広島大学東京オフィス(東京都千代田区内幸町一丁目3番1号幸ビルディング2F)
報告者及び報告タイトル:
1.黄紹恒(国立陽明交通大学客家文化学院教授)
「ある知識人の日本引揚―台北帝大教授・楠井隆三の戦後」
2.顔杏如(国立台湾大学歴史学系副教授)
「『全国引揚者新聞』に見る引揚者の戦後初期―台湾との関係を中心に」

2024年03月07日

2024 1/16 淡江大学冨田哲副教授講演会を開催しました

 2024年1月16日、淡江大学日本語学科副教授の冨田哲先生を講師にお迎えし、講演会「一日本語母語話者からみた台湾言語社会」を行いました。本講演の数日前に台湾で行われた「第16任總統副總統及第11屆立法委員選舉」の現地状況や話題になった出来事について簡単に紹介した後、昨今の台湾で起きている言語にまつわる現象や問題に言及しました。

 

 冨田先生は、はじめに、昨今の台湾でみられる言語現象や問題について、台湾の言語人口(あるいはエスニシティ)をどのように理解すればいいのかという点について、それぞれの言語人口に関する資料はあるものの、どのような定義で〇〇語や〇〇人と判断するのかは非常に曖昧であると述べました。

 次に華語教学に対する認知の高まりについて述べました。約20年前は、台湾で留学生向けの中国語教育課程はほとんど用意されていませんでした。しかし、中国語を学ぶ外国人が増え、台湾人の間では台湾華語という名称を使う場面も出てきました。一方で、外国人の「つたない」華語に関して、台湾人は幾分慣れてきたが、寛容度が必ずしも向上した訳ではない状況で、冨田先生はどの言語においても母語話者は、外国人やその国にルーツがある人の話す「つたない」言語も受け入れていく責任があると感じていると述べました。
 さらに、近年台湾の街中で見聞きする機会が増えている韓国語にも言及しました。MRTではこれまで主要駅で日本語のアナウンスが導入されていましたが、昨年から韓国語のアナウンスも開始されました。しかし外国語アナウンスの際の、台湾の地名の外国語表記(その言語での読み方に合わせるか、台湾華語の発音に合わせるか)について、専門家の中でも意見が分かれる難しい問題があることを指摘しました。
 最後に、台湾語の表記法の普及について取り上げました。台湾語の表記法自体は昔からあるものの、多くの台湾人は使用しておらず、また、漢字という大多数の人にとっての共有の書記言語があるところに、「あらたな」書記言語を持ち込むことは非常に困難であるとも述べました。冨田先生は一橋大学の吉田真悟氏の言葉を借り、「台湾語は台湾意識の象徴であり続けているが、それを推進することには限界や弊害がある。そのため台湾語の復興や文字化のための闘いは、他者の排除ではなく、色々なバックグラウンドや考え方があることを前提に、理解を広げていくことにある。」と締めくくりました。

 

 質疑応答では、熊本にTSMCの工場ができることを受けて、熊本県の企業が台湾人ひいては台湾滞在経験のある日本人学生のインターンを積極的に募集している件や、台湾人が「つたない」華語に本当に寛容ではないのか、という点について議論しました。


日時:2024年1月16日 16:50-18:20
講演者:冨田哲先生
場所:大阪大学箕面キャンパス
講演タイトル:「一日本語母語話者からみた台湾言語社会」
参加者:林初梅教授ゼミ受講生17名

2024年01月18日

2023 7/24劉靈均氏講演会を開催しました

2023年7月24日、大阪公立大学人権問題研究センター特別研究員である劉靈均氏による講演「『同志』(トンジー)とLGBTの狭間で―台湾と日本で性的少数者として生きる―を開催しました。

 まず、劉氏は、同志文学の研究に取り組んできた自身の来歴や、近年の日台のLGBTに関する団体や映画、音楽、ニュースなどを紹介した後、LGBTという言葉についての説明をしました。LGBTは欧米では1980年代以後一般用語になったのに対し、日本では、先行研究から、メディアにおける本格的な出現は2012年で、さらに2015年にビジネス関係の週刊誌がLGBTビジネス特集として取り上げた事例を紹介しました。ここで劉氏は特に、人権についての問題の検討よりもまずビジネス市場として取りあげられたことへの疑問を述べました。さらに、LGBTに関する差別が他の様々な差別を行う人々によって起こされている事態についても言及しました。

 

 次に、台湾のLGBT・「同志」運動の歴史について説明しました。「同志」という呼び方については、元々共産主義者の使用していた語が、1980年代後半に香港の劇作家林奕華とエッセイスト邁克が「lesbian and gay」と「queer」について「同志」と訳出し、後に台湾でも定着したものであること、さらに、「同志」はLGBT当事者内部の連帯及び、「直同志」という非当事者間の連帯、他のイシュー(マイノリティ)との連帯の特徴を持つことについて言及しました。また、台湾のLGBTに関する法制度については、近年の進展の一方で、それらの背景に亡くなった性的少数者との関連があることや、バックラッシュの強さもあり、デマで自殺・自傷行為に追い込まれた人々が100人を上回ったとされることについても解説しました。

 

 次に、台湾とは対照的な日本のジェンダーに関わる状況を述べたうえで、劉氏の研究する「同志文学」に関して言えば、日本において必ずしも過去にみられなかったわけでなく、この要素を持つものは日本統治期台湾にも存在し、戦後の台湾の同志文学のなかには、日本に関わる様々な描写や日本の文学、エンターテインメントの影響がみられることを指摘しました。さらに、戦後のアジアの状況として、日本は憲法で言論の自由が守られ、LGBTにおいてはサブカルチャー・消費文化をリードしてきたものの、バブル崩壊後の傾向として、性に関する保守化がみられたことを述べ、これに対し、アジア諸国においてはこの日本の性の保守化時期にジェンダーを含む人権が進展してきたと述べました。

 最後に、近年の日台が関わる文学や劇について、また劉氏自身の取組みや、日本でも読める台湾の同志文学についての紹介もしてくださり、時間いっぱいお教えいただきました。台湾のLGBT・「同志」運動や文学だけでなく、日本との関わりも含め多角的にご教授いただき、充実した講演となりました。

2024年01月16日

2023 12/16 台湾研究講座交流会@丹波ツアー 台湾スイーツとジビエを囲んで

 2023年12月16日、台湾研究講座主催、里山グリーンネットワーク様ご協力の元で、丹波ツアーを開催いたしました。

 

 里山活動の現場視察と、台湾北部客家地域から山間地域の地域創生を考える講座を盛り込んで、ジビエ・台湾茶・台湾固有の植物性ゼリーを味わいながら日本と台湾の共通課題を探るテーマで、現地の人々と学生を交えて学びの場を作りました。
 参加者はスタッフ協力者を含め約30名、丹波黒井駅前の春日住民センター調理室に集合後、里山グリーンネットワークの藤本さんの用意してくださった鹿肉ジビエのお料理と、大和という地元の料理屋さんのお弁当、そして石田さんがつくってきてくださったオーギョーチ(愛玉子)や黄紹恒先生の東方美人茶および擂茶(レイチャ)をいただきながら、丹波の鹿肉利用をめぐるお話、地元の産品を生かした活動拠点にまつわるお話を伺いました。

 

 

その後チャーターバスにて移動中、車内では藤本さんがこれまで取り組んでこられた鹿肉利用のための活動の歴史をお話いただきました。
 到着後は丹波姫もみじの鹿解体作業所にて、日々猟師さんから運び込まれてくる鹿の解体の場を全員で見学。

 実際に見る動物の解体シーンなどは、都会の消費生活では体験できない場面もあり、改めて普段の生活で様々な「肉」を食しているにも関わらず、このプロセスが我々の目にしないところで常に起きていることを実感しました。

 

 

 参加者の皆さんは熱心にその工程を見学され、現地での問題もお聞きすることができました。
 例えば実際に利用されたり食に供されるのはごくごく一部で、その大半は廃棄物として処理されるという過酷な現実、特に皮なめしにつかえる鹿皮の利用をなんとか推進しようと藤本さんは各地努力をされて美しい帽子などの製品加工をされているが、実際にはなかなか再利用できずにこれも産廃として有料処分している現状など。 さらに地元の野菜農家などは鹿肉加工をよびかける里山活動に対して、自分たちの農作物を荒らすしかなんて全頭殺してしまえばいいのにと、商売目的でしか捉えられていない現実や、大半の地元の人たちの鹿の害に無関心を装う状況など、複雑な利害関係の状況が日々「獣害」問題の周辺を取り巻いていて、里山活動の難しさも改めて確認することとなりました。

 

 また分水嶺のある水分け公園という施設では、お二人の講師から台湾の客家地域の問題について熱いレクチャーをいただき、仙草茶とオーギョーチを試食していただいたり、現地の地消地産の商品なども視察。丹波ツアーでは、多くの学びと気づき、今後を展望し旧交をあたため、新しい出会いに巡り合う機会となりました。

 

2024年01月11日

2023 12/5,12/12 台湾大学台湾文学研究所との共同授業を行いました

 2023年12月5日、12日の林初梅教授の授業において、台湾大学文学研究所の張文薫副教授及び同研究所の学生とオンラインで共同授業を行いました。


 12月5日の授業では、日本と台湾の国語教育を大テーマに、大阪大学の学生がグループ報告を行いました。各グループでは、古典教育、現代文教育、外国文学の採用、大学入試の状況をそれぞれ課題にし、日台の状況の比較を行い、調査結果を報告しました。台湾大学の学生からはそれぞれの報告に対して質問が出され、活発な議論が行われました。また、大阪大学の学生からは、さらに踏み込んだ問いかけも行われ、充実した共同授業を行うことができました。

 12月12日の授業では、台湾大学の学生が、台湾の学習指導要領から古典文学作品が数多く削除されたことに関わる動向を導入に、台湾の教科書の変遷、台湾での国文教師の実情などについて報告を行いました。教科書の変遷は台湾の歴史を物語っており、また、教師の状況は日本と台湾で異なる点もあり、大阪大学の学生にとっては新たな発見の機会を得ることができました。

 

 2回にわたり、日台それぞれの教育事情について交流することができ、大阪大学側も台湾大学側も良い刺激を得ることができたと考えています。

 

 

2023年12月14日

2023 10/25-11/25 台湾文学日本語翻訳書籍展を開催しました

 2023年10月25日から11月25日 まで大阪大学台湾研究講座、国立台湾文学館、箕面市立船場図書館の共同で「台湾文学日本語翻訳書籍展」を開催しました。

 

 今回は原住民文学、ジェンダー文学、女性作家の文学をテーマとした日本語翻訳書籍、約60冊を展示し、台湾文学の日本語翻訳の成果をご覧いただきました。また、船場図書館の蔵書に中国語原本があったものについては、原本も一緒に展示しました。書籍展後、文学館の展示本は船場図書館に寄贈され、引き続き台湾文学をお読みいただくことができます。
 

 また、当書籍展では台湾文学館から提供された文学館の立体模型キットや、立体カードがご好評をいただきました。

メディアにおいてはTAIWAN TODAY、中央通訊社及びその日本語版・フォーカス台湾にも取り上げていただきました。

 入口付近にてポスター

 

 ご来場いただいた皆さま、当書籍展にご協力いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

 

 

 

2023年11月28日

2023 11/13 国立陽明交通大学 黃紹恆教授講演会を開催しました

 2023年11月13日(月)13:30-15:00、国立陽明交通大学客家文化学院の黃紹恒(黃紹恆)教授を講師にお招きし、講演会 「台湾北部における客家地域の地方創生について」を開催しました。

 


 講演で黄教授は、まず前提として、台湾における社会発展の過程で、少子高齢化や都市への人口集中といった現象が起こり、これらの問題に台湾が向き合わざるを得なくなったことを指摘しました。そのうえで、上記の問題を解決するため、政府が地方創生を推進し、若者が地元に帰ること、もしくは六大都市以外の場所に移住することを期待し、数年間の尽力を経て最初の成果を得ることができたと説明しました。

 さらに、黄先生はご自身のフィールドワークの結果を紹介しました。その結果を踏まえ、言語と地方創生の関係について、若者が地元に戻ることができれば、地方の発展を促進できるだけでなく、地元の言語も保存され、それが使用され続けることで、アイデンティティの強化につながると、外国語学部の学生に向けてもう一歩踏み込んだ指摘をしました。

 

 この他に、土地に蓄積した多くの歴史や文化的要素は一度失われれば元に戻すことができないことにも言及しました。近年、台湾企業が事業を拡大し、それに伴う環境問題が顕在化しており、科学技術の発展と文化の保存の間で何を選択するべきか、考える必要があるとも語りました。

 講演の最後には、阪南大学国際観光学部の重谷陽一准教授も観光の立場からディスカッションに加わり、台湾と日本は類似点が多いため、互いに参考にし、学びあう必要があることも指摘されました。

 

 講演終了後は、黄教授から新竹の名産品・東方美人茶と擂茶を用意してくださり、学生も台湾の飲食文化を体験することができました。

 

2023年11月16日

2023 11/13 井本留美子氏(愛玉籽研究室室長)講演会を開催しました

 2023年11月13日(月)15:10-16:40に愛玉籽研究室室長の井本留美子氏を講師にお迎えし、講演会「愛玉子(オーギョーチ)について」を開催しました。

 本講演では井本先生から台湾特有の植物・愛玉子について生態、歴史、飲食、医療、言語等の様々な観点からご紹介いただきました。

 

 講演中には、実際に井本先生から愛玉子の原型を学生に見せまていただきました。そして、愛玉子が入った紙パックの中から愛玉子の成分を水中に濾し出す作業も体験しました。


 さらに、井本先生は台湾の特有の自然の生態と、そこにおける愛玉と愛玉小蜂の関係性について解説しました。相利共生の生物の特徴について説明したほか、野生の愛玉が少なくなってきていること、近年愛玉子の品種改良に力を入れており生産量が増加していること、生物の科学技術業界と共同でフェイスマスクを開発していることなどをお話しいただきました。

 また、歴史と言語の視点から、愛玉の名前の由来と発音を解説しました。愛玉は日本の植物学者・牧野富太郎氏が台湾で発見したもので、その関連エピソードが本年8月のNHK連続テレビ小説「らんまん」に出てきたため、日本人が愛玉に対して興味や関心を持つようになったことも取り上げられました。

 

 講演会の最後には、深尾教授と井本先生が会場の学生と参加者にはちみつレモン味の愛玉を振舞い、その爽やかな風味に皆、舌鼓を打ちました。


2023年11月16日

2023 10/18,25,11/1 黃紹恆教授による客家文化講義を行いました

 2023年10月18日、25日、11月1日の5限(16:50~18:20)、林初梅教授の「多文化社会台湾の言語事情」の授業で、陽明交通大学客家文化学院黃紹恆教授から客家文化について、ご講義いただきました。

 

 黃教授は2023年秋冬学期より、本学の招聘研究員として台湾からお越しいただき、台湾研究講座においても研究協力者としてご協力いただいております。

 今回の授業内容は、全3回で1.客家の文化と歴史、2.客家語の種類、3.客家の音楽(近代以前から現代まで)と様々なテーマについてお教えいただき、学生にとって客家文化を理解する大変貴重な機会となりました。

 

 黃教授には11月13日に「台湾北部における客家地域の地方創生について」という演題でご講演をお願いしております。詳細はお知らせをご覧ください。

2023年11月02日

2023 10/31 孫大川教授講演会を開催しました

 2023年10月31日(火)、国立台湾文学館の台湾文学翻訳書籍展の開催に合わせて、台湾原住民文学者で東華大学栄誉教授でもある孫大川(パァラバン・ダナパン)氏をお招きし、講演会「ペンで歌うーー原住民文学形成の背景と意義」を開催しました。

 司会は本学林初梅教授、通訳は岡野翔太講師が務めました。


 孫教授はご自身の成長とご家族、特に母親から受けた影響についての話題を導入にそこから原住民の伝統的な口承及び舞踊の文化を紹介しました。     
 その後、時代が進み台湾が国内外からの様々な困難に直面する中で、特に本土化の議論が起こったとき、孫教授は今こそ台湾の原住民が参入し、変化を起こせるのではないかと考えていたことを、当時を回顧し述べました。

 

 講演の後には、孫先生と長年親交があり、ご自身も台湾原住民文学研究家である下村作次郎教授(天理大学名誉教授)が、台湾原住民の基礎知識と現状を紹介しました。講演会の最後には数名の先生方が原住民の曲を歌うなど、盛会裡に終了しました。

 

 なお、台湾文学翻訳書籍展には孫大川(パァラバン・ダナパン)教授の書籍、下村作次郎教授の翻訳書も展示しております。ぜひ手にとってご覧ください。

2023年11月02日

2023 10/1 第4回台湾引揚研究会

 2023年10月1日 10時から11時10分まで、広島大学東京オフィスにて第4回台湾引揚研究会を行いました。今回は、共立女子大学菅野敦志教授による研究報告を実施しました。

 菅野教授は、1954年にフィリピンのマニラで開催された第2回アジア競技大会に参加した各外地生まれの日本人選手に注目し、彼らの外地での生活、引揚げ、及びその後の経験がどのようにスポーツに結び付けられたのか、その後、彼らの力がどのように生かされたのかを主に分析しました。

 また、菅野教授は、先行研究も踏まえ、第2回のアジア競技大会について、1951年に日本がフィリピンの反発を受けながら参加したニューデリーの第1回アジア競技大会、東京オリンピックのショーウィンドウとしての1958年第3回大会の間の大会としてスポーツを媒介としたアジア復帰、和解のナラティブの意味を持つ大会と位置づけ、そこに外地出身者が参加していたことの意味を考えることで、これまでのスポーツ史の叙述の枠組みを見直していく必要性を説きました。

 報告終了後は、戦後中華民国の国際スポーツ大会の構想について、アジア競技大会における日本語交流の状況についてなど、当時の台湾とスポーツの関連、帝国日本期からの連続性を意識した質問が出されました。

2023年10月19日

2023 10/19 台湾師範大学附属高級中学の学生が来校しました

 2023年10月19日(木)、台湾師範大学附属高級中学(日本の高等学校に相当)の学生(32名)が本学箕面キャンパスに来校し、本学の学生たちと交流プログラムを行いました。

 記念ホールでの歓迎の後、中国語専攻の学生がキャンパス内を案内し、光と平和の広場にて本学学生代表が大阪大学の紹介と学生の一週間の生活についてのプレゼンテーションを行いました。

 記念ホールにて

 学生代表によるプレゼンテーション

 

 その後は教室に移動し、交流会を開催しました。交流会では8つのテーマの中から高校生が本学学生にインタビューし、最終的には、高校生たちがそれをまとめて発表しました。活発な交流が行われ、お互いに充実した学びを得ることができました。

 


2023年10月19日

2023 9/17-26 台湾言語文化研修プログラムを実施しました

 2023年9月17日から9月26日まで、大阪大学台湾研究講座は10日間の台湾言語文化研修プログラムを実施しました。 今回、同講座では研修の範囲を台湾各地に広げ、訪問した各地でフィールドワークを行いました。その際、台湾大学、陽明交通大学、台湾師範大学、台南第一高級中学、台湾師範大学附属高級中学、台北市明湖国民小学など多くの学校を訪問しました。学生は史跡や伝統ある校舎を直接巡る中で学校の様子を見るだけでなく、現地の学生とも活発に交流し、授業にも参加しました。

 今回の行程は以下の通りです。

9月18日:台湾師範大学で、台北高等学校時代の歴史的建造物を見学し、社会言語学の授業を聴講しました。

 

9月19日:陽明交通大学の教授・学生の引率・付添のもと、客家文化のフィールドワークを行いその文化についての理解を深め、同大学の学生とともに北埔の地域活性化の取組みも学びました。

 

9月20日:台南第一高級中学で授業を見学しました。また、同校の教員から台南一中の校史館をご案内いただき詳細にその歴史を解説いただきました。安平壺などの文化財展示も見学しました。

 

9月21日:台湾文学館を訪問しました。館員の解説のもと、戒厳令時期の禁書・禁歌の展示を見学しました。印象深い展示物を観覧し、戒厳令時期の台湾について、より理解を深めることができました。

 

9月22日:明湖小学校を訪問しました。授業見学に加え、日本文化に関する授業を行い、台湾の児童たちと日本文化を共有しました。その後、台湾大学文学部を訪問しました。台湾大学では、中国文学専攻の教授・学生の歓迎会で活発な文化交流を行うことができました。最後は、台湾師範大学付属高級中学を訪問し、同校の懇切な対応のもと、儀隊の銃操作練習(実際の銃ではありません)を体験し、その技術の難しさを知りました。

 


 

 また、大学教授、地元の名士や専門家のガイドのもと、新竹では北埔天水堂を観覧し、台南では台南五条港街区、安平古堡、八田與一記念園区など歴史的、文化的意義をもつ場所を訪問しました。

 

 

 23日から25日は学生たちの自主フィールドワーク及び発表会を行いました。同プログラムは26日に無事終了することができました。

 今回の研修は、学生たちにとって、これまで授業で学んだ内容について実際に自分の目で見て調査を行い、考察を深めることができた点が最大の収穫であり、意義深い研修になったと考えています。

2023年10月06日

2023 9/1-4 陽明交通大学の研修プログラムに中国語専攻の学生が参加しました

 2023年9月1日-4日、国立陽明交通大学主催の夏キャンプに本学中国語専攻の学生2名が参加しました。

 

 同キャンプでは、新竹市内各地の寺廟を周り、資料をもとに聞き取り調査などを行うフィールドワークに加え、歴史学専攻の学生との討論、主催の教授陣の助言を経て、新たな歴史的な仮説を導き出すというプログラムの研修が行われました。

 参加者は台湾の歴史研究を志す学生が中心で、日本人の参加は今回が初めてでした。
 参加学生の小倉隆志さんからは「台湾の歴史的な場所を多く訪れて自分の目で見たり、真剣に議論するグループのメンバーを見て研究とは何かということを深く考察したりと、大学のなかで中国語を学んでいるだけでは経験できないことができた。卒業研究にも繋がるであろう教授や学生との出会いが一番大きかった」(抜粋)という感想が寄せられました。

 台湾の大学教授や次世代を担う学生たちとの議論・交流や、現地のフィールドワークを体験できたことで、学生にとっては自身の研究や今後に役立つ貴重な学びの機会となりました。

2023年09月14日

2023 7/21 林伯杰氏講演会を開催しました

 2023年7月21日、林伯杰先生をお招きし、「台灣電影 百年金曲」という題で華語・台湾関係の映画と音楽についての講演会を開催しました。

 

 林伯杰先生の大阪大学台湾研究講座の講演は今回で3回目であり、昨年度はオンラインでご講演いただきました。大学に来校されての講演は2019年以来で、現在の箕面キャンパスには今回初めて来校されました。

 今回、林先生は戦前の「馬路天使」「サヨンの鐘」から現代の「海角七号」「言えない秘密」まで中国・香港・台湾に関する映画を紹介し、各映画とその音楽について分析を行い、同地域の映画音楽の歴史的展開について概観しました。

  さまざまなレベルの学生が学ぶことができるように配慮した構成で、林先生は最後に、映画、音楽からも言語を学ぶことができることを伝え、学生たちの言語学習を激励しました。学生たちも熱心に参加し、充実した講演となりました。

 

講演会概要
講演タイトル:台灣電影 百年金曲
講師:林伯杰氏
講演会日程:2023年7月21日(金) 13:30-15:00
場所:大阪大学箕面キャンパス501講義室

2023年07月27日

2023 7/18 ジョンズ・ホプキンズ大学 橋本悟助教授の講演会を開催しました

 

 2023年7月18日、ジョンズ・ホプキンズ大学比較思想及び文学学科の橋本悟助教授を講師に迎え、講演会「東アジアにおける近代文学の起源」を開催しました。

 

 橋本助教授は東アジア近代文学の中心人物を取り上げながら、近代化へのアプローチが様々にみられたことを述べ、また、同テーマを通してポスト・グローバル化時代におけるアジアー西洋、特殊ー普遍の概念とこれまでの関係性について、結びつけられていたものを問い直していく必要性があることを指摘しました。
 本講義は学部生や大学院生、一般申込み者も参加し、満員のホールの中、文学を専門とする院生から質問もあり、充実した会となりました。


講演会概要
講演タイトル:東アジアにおける近代文学の起源
講師:橋本悟氏(ジョンズ・ホプキンズ大学比較思想及び文学学科助教授)
講演会日程:2023年7月18日(火) 16:50-18:20
場所:大阪大学箕面キャンパス 記念ホール

 

2023年07月21日

2023 7/18 台湾大学台湾文学研究所所長 張文薫副教授講演会を開催しました

 2023年7月18日、国立台湾大学台湾文学研究所副教授兼所長の張文薫先生を講師に迎え、講演会「「人間」本位の歴史ー作家・陳柔縉の日本時代」を開催しました。

 

 作家として活躍した陳柔縉は、日本統治時代やその前後の台湾における重要な転機をもたらした人物を、日常のエピソードや写真をもとに活き活きと描き出してきたことで知られています。張先生は陳柔縉が著作で取り上げた人物を紹介しながら、彼女の日本時代の視点について分析をしました。また、彼女の手法を踏まえ、自身の祖父についても紹介しました。
 講演中には、Q&Aカードを使った交流活動もあり、学生からは「日本統治時代について理解が深まった」という感想が寄せられました。


 

 

講演会概要
講演タイトル:「人間」本位の歴史ー作家・陳柔縉の日本時代
講師:張文薫氏(国立台湾大学台湾文学研究所副教授兼所長)
講演会日程:2023年7月18日(火) 15:10-16:40
場所:大阪大学箕面キャンパス501講義室

2023年07月21日

2023 7/17 台湾研究講座 台湾引揚研究会を行いました

 2023年7月17日、大阪大学台湾研究講座で台湾引揚研究会を行いました。湾生で引揚げ経験者の若槻雅男氏をお招きし、ご自身の台湾経験について語っていただきました。

 

 1934年台北市に生まれた若槻氏は、同地での学校生活、空襲やその後の疎開経験、父との西螺での生活、戦後引揚げたあとの経歴についてなど、ご自身のこれまでの経験について言及しました。

 今回のインタビューには立正大学所澤潤教授、台湾大学顔杏如副教授、高崎経済大学石井清輝准教授、共立女子大学菅野敦志教授が参加し、愛知大学黄英哲教授、琉球大学野入直美准教授もオンラインで参加しました。

 本研究会では今回のインタビューに続き、関連研究発表を続けて開催し、その後、若槻氏の台湾経験を文字化し、書籍にまとめたいと考えています。

 

2023年07月17日

2023 6/30 香港大学林姵吟教授講演会を開催しました

 2023年6月30日(金)午後、大阪大学の東京オフィスにて、香港大学の林姵吟教授を講師にお招きし、「以流變(動)物與群島認同:台灣海洋文學的兩種面貌」と題して講演会を実施しました(前日、6/29は愛知大学で実施)。

 

 林教授は導入として、台湾文学の分野で、戒厳令が解かれた1990年代初期、海洋を中心とした視点が続々と取り上げられ、注目度は高まったものの、生態系の保全や、先住民の文化認識論が蔑ろにされるなど、解決を要する問題があったことに言及しました。

 その上で林氏は、廖鴻基、夏曼・藍波安の2名の作家の作品を例に挙げ、検討を行いました。廖鴻基については、廖が鯨類(クジラ・イルカ)に関する作品で鯨類に自己を投影しているが、それは自己発見の契機のみならず、文学における人類中心主義の描写を再構成していると分析しました。2人目の夏曼・藍波安については、彼の海洋作品からタオ族の要素を見出すことができ、長きにわたる漢民族の文化的覇権を批判し、それが他の島嶼文化との、国を超えた繋がりを促していると分析しました。最後に、海洋のイメージや構想が台湾社会にもたらす影響についても取り上げました。

 今回の講演会は、ディスカッションも活発に行われ、オンラインでも同時配信しました。会場参加者・オンライン参加者の協力もあり、多くの交流ができました。


講演会概要
講演タイトル:以流變(動)物與群島認同:台灣海洋文學的兩種面貌
講師:林姵吟氏(香港大学中文学院言文学系副教授兼学系主任)
講演会日程:2023年6月30日(金) 14:00-17:00
場所:大阪大学東京オフィス

2023年07月03日

2023 5/29-31 大東文化大学 野嶋剛教授講演会を開催しました

 2023年5月29日(月)、30日(火)・31日(水)の3日間にわたり、大東文化大学社会学部野嶋剛教授を講師にお招きし、講演会「香港、台湾、そして中国から見る東アジアの21世紀」「KANOとWBCから考える日台『野球/棒球』交流の系譜」を開催しました。


 1日目は、野嶋教授ご自身が日本で上映権を持ち、日本語字幕も制作した台湾映画「太陽の子」を鑑賞し、その後に講演「香港、台湾、そして中国から見る東アジアの21世紀」を行いました。同日の内容についてはIWJチャンネルにて動画をご覧いただけます。野嶋教授は、異なる政治体制の三地(中国大陸、台湾、香港)がいつか繋がる日が来るのだろうかと漠然と考えていた教授の学生時代の意識を踏まえ、現在の三地の緊迫した状況についてまでの歴史や今後の捉え方などを「中国とどう向き合うか」というテーマを軸にお話しされました。 ジャーナリストとして、香港や中国に気軽に行きにくくなった現状も踏まえ、どのような理想を求めて「アジア」を学べばいいのかを歴史から紐解き、日本が持つステレオタイプの考え方からの脱却の必要性も含め、学生に向けてメッセージを投げかけていただきました。質疑応答では金門島についてのお話も伺うことができました。

 

 2日目・3日目は「KANOとWBCから考える日台『野球/棒球』交流の系譜」講演を行いました。2日目の講演では、中国語専攻の3、4回生を中心に、ゲストも含め20人ほどが参加しました。3日目の講演は中国語専攻の1年生を中心に、他学部・他専攻語の学生を含む20人ほどが参加しました。

 野嶋教授は映画KANOとWBCを通して日本統治時代の台湾の高校野球(当時は中等学校野球)チーム・嘉義農林学校の歴史やその系譜が今も引き継がれていることを紹介し、戦前の経験を通じて台湾野球と日本野球が相互に影響を与えていることを述べました。また、野嶋教授は外交関係がない日本と台湾の間で、これほどまでに親近感を感じる理由として、共通文化としての野球が一役買っているのではないか、とも語りました。講演会後の参加者とのディスカッションも両日とも活発に行われました。

 

2023年06月01日